1977年9月28日に日本赤軍が起こしたダッカ日航機ハイジャック事件について、わかりやすく時系列にまとめてみました。
ダッカ日航機ハイジャック事件を時系列に
事件概要
フランス発東京行きの日本航空機が日本赤軍メンバーによってハイジャックされた事件。
乗客乗員は人質に取られ、全員が解放される事件解決までは142時間を要しました。
9/28 事件発生
1977年9月28日、日航機472便は犯人グループに進路変更を命じられ、バングラデシュの首都ダッカのジア国際空港（現シャージャラル国際空港）に強行着陸します。
経由地であるインドのムンバイ国際空港を離陸直後のハイジャックでした。
本来の航路
シャルル・ド・ゴール空港発
～ギリシャのアテネ国際空港
～エジプトのカイロ国際空港
～パキスタンのジンナー国際空港
～インドのムンバイ国際空港★
～タイのドンムアン国際空港
～香港の啓徳国際空港 経由
東京国際空港着
犯人たちは拳銃や手りゅう弾で武装し、乗客乗員151人を人質に取りました。
彼らの要求は２つ。
- 人質の身代金として600万ドル
（当時の日本円で16億円） - 日本で服役・拘留中のメンバー9人の釈放と出国
「要求が拒否されれば、アメリカ人の人質から順番に殺害する」としていました。
アメリカ人の人質とは、当時のアメリカ大統領ジミー・カーターの友人であり、犯人たちは彼がこの飛行機に乗ることを知っていたと見られています。
最初の交渉はバングラデシュ当局があたる
日本政府が交渉のための人員を送るまでの間、犯人グループとの交渉にあたったのはバングラデシュ当局のマムード空軍司令官でした。
その内容は、日本大使館を介して日本政府に報告されることになります。
このころ、燃料節約のためエンジンを切った飛行機の中は気温45℃にまで達し、熱中症になる人が続出していました。
幸いにも日本航空の嘱託医師がたまたま乗り合わせていて手当にあたったことや、エアコン用の補助動力車などの出動や水の差し入れにより、何とか乗り切ったようです。
日本政府との直接交渉を拒否
在ダッカ大使館員が空港の管制塔に駆けつけましたが、犯人グループには日本政府と直接交渉をする意思はありませんでした。
自国の事情で早期解決を望むバングラデシュ当局も、日本政府の介入を嫌がります。
9/29「超法規的措置」を決定
現地で時間稼ぎを強いられている間に、29日夜には「超法規的措置」を日本政府が決定します。
それは、犯人グループの要求2点をすべて受け入れるということでした。
この決断に際して、当時の福田赳夫総理が発した言葉は語り継がれることとなります。
「人の命は地球よりも重い」
身代金は、600万ドルすべてを日本国内で用意することができず、アメリカから空輸で取り寄せることになり1～2日の時間が必要でした。
9/30 交渉にあたる代表団派遣の発表
事件発生から2日後、日本政府は現地で犯人との交渉にあたる代表団の派遣を発表します。
団長は石井運輸政務次官。
政府の方針通り「乗客乗員の人命尊重」を第一としました。
30日夜には、不足分のドルもアメリカより届き、準備は整います。
10/1 日本政府の派遣団出発
事件発生から4日目、犯人グループが釈放を要求した9人の受刑者のうち出国を希望した6人が、2台の護送車に分乗して法務省の出入国管理事務所に到着しました。
ダッカへ向かう救援機には
衣料品
６トンの食料品などの救援物資
身代金600万ドルが入った黒い鞄3個
を積み込み
- 日本航空の社長・同社の役員
- 交代の客室乗務員
- 運輸省幹部を中心としたハイジャック対策の政府特使
- 釈放された６人
が乗り込みました。
「超法規的措置」で釈放されたのは以下の６人
奥平純三
城崎勉
大道寺あや子
浴田由紀子
泉水博
仁平映
ダッカへ到着・犯人と交渉
救援機は10月1日のうちにダッカに到着しました。
そのときすでに、事件発覚から70時間が経過していました。
石井団長ら日本政府の派遣団は、全員解放に向けて交渉にあたります。
しかし、すでに交渉にあたっていたバングラデシュのマムード司令官と方針が異なり、なかなか話が進みません。
いらだった犯人たちは、アメリカ人の人質を殺害すると言い始めました。
しかたなく犯人側の要求をのむこととし
釈放されたメンバーや身代金と人質の交換は６回に分けて行う
で合意します。
この交換は１回２回３回・・・と進んでいき、
日本赤軍の幹部である奥平純三の番になったとき
「日本政府の派遣団と残りの人質全員を交換するようにハイジャック犯を説得してほしい」と
奥平順三に依頼をしました。
しかし、その願いは叶いませんでした。
10/2 クーデター発生
10月2日早朝、ジア国際空港内に銃声が響き渡ります。
石井団長らは何が起こったかわかりません。
バングラデシュ軍の兵士らの不満から起きた軍事クーデターでした。
ハイジャック事件による混乱に乗じて起きたものです。
幸い、数時間でクーデターは鎮圧されましたが、
この影響でハイジャックされている日航機はバングラデシュ政府より離陸を命じられることになりました。
600万ドルを積んだハイジャック機が万一反乱軍の手に渡るようなことがあれば、事は複雑になり深刻な結果を招きかねない、というバングラデシュ政府の判断だったと思われます。
10/3 追加で人質を解放
犯人たちは「飛行機が離陸するために必要なこと」を乗務員たちに尋ね、機体を軽くするために追加で人質47人を解放します。
この時点で機内に残っている乗員乗客は、交代で入った乗員も含めて36人。
先のバングラデシュ政府による離陸命令にしたがい、ハイジャック機は救援機とともにアルジェリアへ向かいます。
経由地のクウェートで7人、シリアのダマスカスで10人の人質が解放されました。
10/4 犯人投降と人質全員解放
ハイジャック機はアルジェリアに到着します。
そこで、犯人５人と釈放された６人はアルジェリア当局に投降して管理下に置かれます。
同時に残りの人質19人全員が解放されました。
事件発生から7日目のことでした。
事件のその後
ハイジャック犯６人
- 丸岡修 2011年獄中死
- 和光晴生 無期懲役
- 佐々木規夫 国際手配中
- 坂東國男 国際手配中
- 西川純 無期懲役
釈放された６人
- 奥平純三 国際手配中
- 城崎勉 懲役12年の判決（控訴中）
- 大道寺あや子 国際手配中
- 浴田由紀子 2017年刑期満了で釈放
- 泉水博 2022年獄中死
- 仁平映 国際手配中
